BR47‐袖擦り合った人々-誰も帰って来ない

国鉄(インチキ)車両図鑑

1916年、ヴィル=アン=サルレー地域では数日前からドイツ軍の攻勢が始まっていた。今この戦域に穴が開いてしまっては、たちどころにパリが危うくなる。補給端末駅にはひっきりなしに列車が到着し、兵士や軍需装備、資材等を降ろして行く。降ろし終わると列車は慌ただしくパリへ引き返して行く。

そしてもうここ何日か、戦域輸送隊の予備役将校デュヴァル大尉は、この補給端末駅の線路脇に立ち尽くして、パリから増援に駆け付けた兵士や市民に向けて声を枯らして叫び続けている。

兵士は市内の募兵事務所に自ら出頭した予備役兵たち、市民はパリの危機に居ても立ってもおれず押っ取り刀で募兵に応じた人々。中には平服でベレー帽を被り、口にパイプを咥えたまま私物の自転車を押している者すらいる。

「兵士よ、市民たちよ! ボッシュ共はあの丘の向こうまで来ているぞ! フランスを救うのはフランス人だ! セダンを思い出せ! ヴェルダンを思い出せ! 敵に出血を強いてパリを護れ! 行け救国の戦士たちよ!」

デゥヴァル大尉の激励に血を滾らせた愛国者たちは口々に

「ヴィーヴ ラ フランス!」「アロンシイ、ピニソレミニ!」

等と叫びながら、我先に敵のいる丘の方角へ走って行ってしまう。

銃砲声はこの数日ひっきりなしに響いている。


「誰も還って来ない…また私は独りになった…」

「誰も還って来ない…また私は置いて行かれた…皆どこへ行ったのだ、なぜ私はここにいるのだ…」

次の補給列車が来るまで、デュヴァル大尉は泣き続けた。戦況は一向に不明だった。

本稿了、2026・3・16

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