文芸の夏

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お方様

文芸の夏ー30大名の江戸上屋敷。大広間に手のひら程の大きさの半纏が、膝くらいの高さの支柱に結び付けられていた。それは「病気で瀕死の藩主」の枕もとに立っていて、殿の加減が少しでも快方に向かえば半纏が上がり、逆に悪化すれば半纏は下がる。下がりき...
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遅滞作戦

文芸の夏ー29花の咲き乱れる野原で源平の両軍が対峙している。両陣営に赤白の幟が翻り、武者達の鬨の声、そして刀槍の日光に反射する光が開戦の間近な事を感じさせる。今にも鏑矢が放たれ法螺貝が吹き鳴らされようと言うその時、源氏方の陣営から両軍の中間...
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百花繚乱に加うるに

文芸の夏ー28崖下の駅だった。駅のすぐ下は波打ち際で、海の色は何処と無く日本海を思わせた。大した理由も無く列車を降りた私は、次の列車を待つ間ホームをウロウロするしかなかった。そうする内に地元の人々が大勢でネコ車を押して反対側のホームに上がっ...
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伊勢商人から貰う

文芸の夏ー27病院の待合室の前に大きな船形の石があり、私はその上に立っていた。その周りを数十人の伊勢商人が取り巻いて、如才ない口調で私を褒めちぎっていた。曰く爪の根元の白い所が実に吉相ですな、曰くあなたさまのネコの額は却って福相でござります...
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主体性が欠如したままどっかを旅する

文芸の夏ー26バンコクからカンボジア国境へ向かう道を車で走っていた。周囲は一面の水田で、遠くに山が青霞んでいる。この眺めは何処と無く「竜ヶ崎から鹿島へ抜ける道」に似ているな等と思っていると、遠くの山影は間違いなく筑波山だったので、あぁここは...
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悪の帝王

文芸の夏ー25状況1TVのワイドショー。ゲストなのだろうか「お洒落で歳相応に美人のお婆さん」が出ており、微笑みながら黒っぽいジュースのような物をコップに注いで、司会者に飲んでもらっている。状況2そのお婆さんは「大悪魔小悪魔を手先として使う悪...
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チャールズさん

文芸の夏ー24シーン1戦時中の日本のどこかの街角。サイドカーに乗った憲兵が、街角で油断無く目を光らせている。問題はその憲兵では無く、彼の腰に下げた拳銃のホルスターに「その人形」がぶら下がっていた事だ。その人形は「チャールズさん」と言う名前で...
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帰ろう

文芸の夏ー23目もくらむ断崖の中程を伝う道、と言うより通路。幅は30センチあるかないか。場所によって崖をコ形に切り取った箇所や、丸太を1本ワイヤーで吊っているような箇所があり、恐ろしくて前に進めない。勿論手すりも何もない。「ここから先は気を...
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終末の出来事

文芸の夏ー22どうやら黙示録が説く所の「終末」が始まっているようだった。町は焼け崩れ、恐怖に駆られた人々は厄災を避けようと他の人を押しのけ、やがて自らも業火に巻かれ、立ったまま全身から火を噴いて絶命する。するとその時、地上の惨劇とは全く不釣...
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猫は猫で祖先を迎える

文芸の夏ー21王が三振したのでテレビを消すと、表で犬が怯えたように吠えていた。庭に出て見ると、飼い猫たちが草むらのあちこちに散らばって、別に何をするでも無く佇んでいる。そうだ、今日は猫盆だった。その事を思い出すと、窓からそーっと様子を見る事...