2026-02

文芸の夏

悪の帝王

文芸の夏ー25状況1TVのワイドショー。ゲストなのだろうか「お洒落で歳相応に美人のお婆さん」が出ており、微笑みながら黒っぽいジュースのような物をコップに注いで、司会者に飲んでもらっている。状況2そのお婆さんは「大悪魔小悪魔を手先として使う悪...
文芸の夏

チャールズさん

文芸の夏ー24シーン1戦時中の日本のどこかの街角。サイドカーに乗った憲兵が、街角で油断無く目を光らせている。問題はその憲兵では無く、彼の腰に下げた拳銃のホルスターに「その人形」がぶら下がっていた事だ。その人形は「チャールズさん」と言う名前で...
文芸の夏

帰ろう

文芸の夏ー23目もくらむ断崖の中程を伝う道、と言うより通路。幅は30センチあるかないか。場所によって崖をコ形に切り取った箇所や、丸太を1本ワイヤーで吊っているような箇所があり、恐ろしくて前に進めない。勿論手すりも何もない。「ここから先は気を...
文芸の夏

終末の出来事

文芸の夏ー22どうやら黙示録が説く所の「終末」が始まっているようだった。町は焼け崩れ、恐怖に駆られた人々は厄災を避けようと他の人を押しのけ、やがて自らも業火に巻かれ、立ったまま全身から火を噴いて絶命する。するとその時、地上の惨劇とは全く不釣...
文芸の夏

猫は猫で祖先を迎える

文芸の夏ー21王が三振したのでテレビを消すと、表で犬が怯えたように吠えていた。庭に出て見ると、飼い猫たちが草むらのあちこちに散らばって、別に何をするでも無く佇んでいる。そうだ、今日は猫盆だった。その事を思い出すと、窓からそーっと様子を見る事...
文芸の夏

八幡宮前

文芸の夏ー20落ち葉の降りしきる八幡様の電停で市電を待っていると、電車ではなく少女がやって来た。恐る恐る少女の背におぶさった私は、彼女の事が心配で心配でならなかった。「大丈夫か、重くは無いか」「大丈夫、平気だよ、お父さん」産まれなかった娘の...
文芸の夏

道連れ

文芸の夏ー19淡い冬日に照らし出された河原の土手道を歩いていると、何時の間にか私と同世代の男と道連れになった。彼は実に良く喋り、そして言葉の合間合間に「サッカー、サッカー」と挟んで来た。サッカー選手なのかなと思っていると、「これから取材に行...
文芸の夏

通り過ぎるものたち

文芸の夏ー18狭い歩道の向こうから、保母さんに先導された子供達が、まるで「道路に豆を撒いた」かのようにやって来た。先頭の若い保母さんは時折後ろを向き、黄色い声を張り上げて子供等を叱ったりなだめたりしている。どうもすれ違うのが大変そうなので、...
文芸の夏

双子の僧

文芸の夏ー17吹雪の斜面を悪者から逃れた二人の僧が登って来る。その僧は双子であった。一人はかなり弱っていて、大木の陰で遂に動かなくなった。「これ真行坊、しっかりせい。もう少しで峰を越えるぞ」「勧行坊よ、私はもうゆかぬ」「何を申す真行坊!」「...
文芸の夏

狐狗狸さん

文芸の夏ー16真新しいオフィスビルの中。ミーティングが始まると言うのに会議室の場所が判らずオロオロしていると、廊下に面した交番が目に入った。警官にそう訊いて見ると、「この廊下の突き当りが電車通りだから、電車で3ツ目の停留所で降りてね。醸造所...