翌朝、奥さん達にしばしの別れを告げた我々一行3人は禁断の廃線跡、幻のキレットに消える謎の鉱山線へと足を踏み出す。

一旦樹林帯を出ると、線路は荒れ放題に荒れて来る。ガイドの二人は昨日までの和やかな雰囲気を引っ込めている。このように路盤そのものが消失している箇所も多い。
更に進めると、線路がどこをどう通っていたのかさっぱり分からない場所が頻発するようになって来た。勾配も尋常ではない。終点のキレットは向こうに見えるコルの更に先だ。

「ケヤーッ! イム! 足元に注意しろっ!」
「ありがとうよ兄貴」

「旦那さん、足元をよく見て。靴に蔦が絡んだら一巻の終わりでアーメンですぜ!」

二人の声が見た事も無い渓谷に木霊しては消える。

ガレ場をくねるヘアピンカーブの下から。上方の線路が根こそぎ外れて、45度の急傾斜を雪崩落ちている。「チャイロ山東壁に線路の残骸が引っ掛かっている」と言うSNSの投稿はこの場所だったと後に知る。

ループ線である。これを見ただけではどこを線路が通っていたのか皆目見当も付かない。しかしジャコマート山を知る二人には明瞭に見て取れるのだろう。足に迷いはなく、ルート取りは正確だった。

ガレに押し流された線路跡。コルを越えるまでの区間は殆どこのような渡渉困難なルートだった。

危険地帯に散在する路盤ごと流出した箇所。ここまで来るとそう珍しい風景ではない。

危険地帯を過ぎて一つの尾根を越えると、再び樹林帯が戻って来た。穏やかそうな斜面を歩くのは涙が出る程嬉しかった。雲行きは怪しく、雨の恐れがあった。


Comments