次の渓谷をへつる。いよいよ鉱山線の核心部分へと入り込んで行く。
この国が社会主義だった時代、ジャコマート山の鉱山地帯は立ち入り禁止区域だったと言う。何を採掘していたのかは最後まで教えてくれなかったが、国で管理すべき重要物資だったのに違いない。

鉱山地帯への入り口にはこうした守衛所が幾つも置かれていて、かつて兄ヴォイリはそうした場所を警護する兵士の一人だった。山林管理組合で働いていた弟イムライヤーも、民兵として山に入る事が多かったと言う事だった。

そうして辿り着いたキレットの直下。兄ヴォイリはここは採鉱場ではないと言う。奥へ進もうとすると突如猛烈な雷雨になった。
「引き返しましょう、この雨は長い。命には代えられません」
「兄貴の言う通りです。下山した方が良い」

兄の話では、キレットの直下に手掘りのトンネルがあって、尾根向こうのカールが採鉱場だったと言う。
ここはキレット直下、ここが私の辿り着けた「終点」だった。
翌日、終点土場まで迎えに来ていた奥さんたちの車で町に戻り、兄ヴォイリの家で探検終了の苦い祝杯を挙げた。仕事から戻ったヴォイリの息子さんが合流し、更にその後から息子さんの奥さんと子供がやって来て、一層賑やかな宴になった。

そして別れの朝。

「またおいで下さい。その時は私らがまたお手伝いしますよ、な兄貴」
「…まっ」
「その頃には中間集材所まで復旧しているかも、な兄貴」
「…その」
「その時は一緒に乗って行きましょう。ではお元気で」
「俺にも喋らせろ!」
こうして私は帰国の途に就いた。
本稿了、2026・1・23


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