演歌の1ジャンル「デスメタル演歌」には一定のファンがあり、毎年大晦日に放映される「呪演歌(じゅえんか)の花道」は、デスメタル演歌の檜舞台として定評がある。

不快に響く重低音と、人間の声とも思えない歌声にやがて脳髄が麻痺するが、

そこで歌われている内容は、正しく日本の心「演歌」そのものなのであった。

その根底に流れる情感は「亡失」である。愛する者が去り、居場所を失い、自分自身すら失ったが、それでも自分は抜け殻ではない、魂だけは叫び続ける。そうした底流がどの曲にも共通する事なのである。

出演する歌手たちは、様々なシチュエーションパフォーマンスを繰り広げ、どうかすると歌そっちのけで熱くて暗いパフォーマンスだけで終わる事もある。ファンの中には歌よりもそこが魅力だとする人もまた多いと言う。

このチーム「maHi」は、昨年の呪演歌の花道の舞台で、代表曲「拒絶」を歌い上げた。5分余りのステージの間じゅう「来るなあ…来るなあ…来るなあ…来るなあ…来るなあ…」と、重低音をバックにひたすら唸り、叫び、怒号し、暴れまくると言う楽曲だ。

このチームは「萌トラレルギルーエイバースキイ」と言う楽曲を歌った。タイトルも歌詞も丸で分からないが、却って分かったら拙いと言う事である。ギター、ベース、ドラムス、チェンソーと言う変わった伴奏が入る。

このチームは若いが大御所の名を欲しいままにしている「東素人」。せつなくはかない恋の霧散を歌う正統派デスメタル演歌歌手である。「たった一人だけ 私が愛した あなたをこのままで 済ませてなるものか 地獄の業火で ミディアムレア”ア”ア”ア”ア”ア”ヴォア”ア”ア”ア”-ッ」凄い。

そして全てのパフォーマンスが終了すると、出演歌手全員がステージ上でジェンカを踊るのが毎年恒例となっている。呪演歌=じゅえんかだから仕方がないのだが、出演者は皆楽しそうに踊っているのも毎年の事である。

そしてジェンカからのグランドフィナーレ。また来年も会おう、とこの世の物とも思えない声で別れを告げて、今年も終わるのだ。
本稿了、2026・3・15


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