ジャコマート山一帯の天気は変わりやすい。日が差し込んで来たので、もう一枚。するとヤードの奥に違和感ある現代的なコンクリートの建造物がある事に気が付いた。

「これは戦争が終わってから建てられた管理事務所ですよ、な兄貴」
「…そ」
「二階は木こりの合宿所になっていて、ここから伐採現場へ通ってたんです、な兄貴」
「…これを再利用」
「これを再利用する計画があって…」
「俺にも喋らせろ!」
ジャコマート山への便を図る為、朝までいた森林公園からここまで線路を復活させて、登山者や観光客を運ぶ計画があると言う。だから起点には整備された機関車が置かれていたのだろう。所が、
「所が中央政府にも金が無くて、な、兄貴」
「…機関車の」
「機関車の修理も中古のジープから使えそうな部品を取ったり、な兄貴」
「…そうジー」
「涙ぐましいモンですよ。まあウチらの国っちゃあ国らしいですけどね、な…」
「かかっ観光こそが我が国を蘇らせるのですう!」
「ををっ!」
先ほどのコンクリート建築は、その暁には登山者宿泊所とインフォメーションセンターにする予定で整備がほぼ終わった状態なのだと言う。

充分休憩を取ったので先を急ぐ事にする。その先の線路は荒廃の度を増し、これが森林鉄道の廃線跡であると聞かないと、何だか判らない土地が延々と続いた。
「俺たちが伐採やってた頃はこんな場所で夜明かしが普通でしたよ、な兄貴」
「…蚊が」
「蚊が多くて、虻も良く飛んで来たよな、兄貴」
「そう、虻も…」
「兄貴はモテなかったから奥さんの事が人一倍心配で…」
「俺にも喋らせろ!」

夕方近くなってようやく森林鉄道としての終点に辿り着いた。
「あの谷の木橋は線路じゃないですよ、あれは木馬道です、な兄貴」
「…木」
「所が馬は高い所では目が回ってしまうんです、な兄貴」
「で…牛」
「牛を使…」
「俺にも喋らせろ!」
二人の奥さんたちが先行して食事の支度をして待っていてくれた。聞けば最近になってこの終点土場の近くまで林道が開通し、比較的簡単に車で近づけるようになったとの事だ。帰路はそのルートを取る事も薦められた。

家族ぐるみで一訪問者である私の面倒を見てくれることに感謝すると、
「そんな事は無いですよ、ね、ヴォイ」
「…うん、まっ」
「今回のガイドで普段森林組合から貰う月給の3倍の手当てが観光協会から出るんですよ、ね、ヴォイ」
「だか…」
「だから私たちも家族総出で協力しないとね、ヴォ…」
「俺にも喋らせろ!」


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