猫は猫で祖先を迎える

文芸の夏ー21

王が三振したのでテレビを消すと、表で犬が怯えたように吠えていた。

庭に出て見ると、飼い猫たちが草むらのあちこちに散らばって、別に何をするでも無く佇んでいる。

そうだ、今日は猫盆だった。その事を思い出すと、窓からそーっと様子を見る事にした。

そう思って良く見ると、庭に散らばって座っている猫の間に、何時の間にか既に死んだ猫たちも混じって、同じように黙って辺りの様子を覗っている。見覚えのある猫も、知らない猫も混じっていた。そこには感動も何も無く、唯互いの無事を確認しているだけのように見えた。

やがて満足したのか、束の間この世に戻って来た猫は立ち上がると伸びをして、一匹一匹バラバラに散会して行った。庭の棕櫚の木の陰や井戸の向こう側にノソノソ歩いて行き、やがて見えなくなった。

私は何となく悲しい気持ちになり、何とかあの猫たちをもう一度呼び戻したいと考えた。庭に出ると段ボール箱を燃やし、火の中にマタタビの実を投げ込んで様子を見る事にした。

すると近所中から庭に入り切れない程の猫が集まって来て、収拾が付かなくなった。

たった今、彼岸に帰って行った筈の猫が、棕櫚の木の陰や井戸の向こうから物凄い勢いで走り出して来る。足で爪を研ぐヤツ、背中に登るヤツ、顔を見上げてニャーニャー鳴くヤツ、喧嘩を始めるヤツ。もう庭中猫だらけで、どれが生きているヤツか死んだヤツか見分けも付かない。

呼び出した以上、もう良いから帰れとも言えなくなり、私は困惑しながらも嬉しい気持ちで一杯だった。

そして嬉しい筈なのに、何故か涙が止まらなかった。

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